産業用システム

設置までの流れ

太陽光発電システムの導入計画から運転開始・廃棄(事業終了)までの大きな流れは次のようになります。

産業用システム設置までの流れ

①契約内容・設計条件

計画地における環境影響評価情報や過去の被災有無を参考に、地域特性や環境特性を考慮し、発電規模などのシステム概要の計画を検討・立案します。

自治体の規制も含めた関連法規を調べ、適切に対応しましょう。

②事前調査

太陽光発電システムを設置する敷地の地盤について、地質図や古地図をもとにその土地が構成された経過を辿っておきましょう。

前調査のチェックポイントの例として、以下があります。

  • 地形や地盤の特徴を把握する。

  • 表層地質を判断(沖積層や洪積層の区別など)し、地層構成を想定する。

  • 地盤の特徴や既往資料から、特殊土層(取扱いに注意を要する土層)の有無を調べる。

  • 近隣の既往資料より、地盤状況(土質・地層・強度・地下水位)を調べる。

  • 過去に近隣で行われた地盤補強工事の有無や施工例について調べる。

  • 地名・植生などから、地域の特性を調べる。

  • 地震など、地盤災害の危険性について調べる。

  • 近隣住民からの聞き取り調査により、敷地の履歴などを調べる。

  • 周辺家屋や道路などの異常(不同沈下や変状など)の状況から、地盤沈下の危険性を調べる。

  • 切土・盛土など造成形態から、不同沈下の危険性を調べる。

  • 造成時期や今後の新たな盛土予定を調べる。

  • 排水計画を立てる。

  • 土砂の流入・流出の可能性を調べる。

地形の調査による地盤の見方

地形の調査による地盤の見方

地形模式図(出所:日本建築学会:小規模建築物を対象とした地盤・基礎)

〇:適 △:注意 ×:対策工法必要

地形的特徴と土地利用 予想される地盤状況 地盤としての良否
谷底平野
(谷底低地)

周辺が山で囲まれている。

小川や水路が多く湿地帯や水田。

かなり深くまで極めて軟弱。 ×
扇状地 山地から平野部にぬける間の傾斜面を有する扇状の地形、畑、果樹園。 ローム、砂レキ等からなる良質な地盤。ただし、伏流水に注意。
自然堤防 現・旧河川の流路沿いの微高地(0.5m~3m高)昔からの集落がある。畑。 ローム、砂レキ等からなる良質な地盤。
後背湿地 自然堤防や砂丘の後にある水田。 極めて軟弱。 ×
湿地 低地、排水不良地、湧水付近、旧河川、盛土をした宅地、荒地。 同上 ×
河原 現河道の流路沿い、荒地、畑、水田。 腐植土とレキ質土のサンドイッチ構造。 ×
デルタ
(三角州)
山地から平野部にぬける間の傾斜面を有する扇状の地形、畑、果樹園。 極めて軟弱、液状化のおそれあり。 ×
砂州 海岸、湖岸沿、林、畑、荒地、集落。 砂地盤、液状化に注意。
丘陵地 地表面が平たんな台地、宅地。 ローム、硬粘土、レキ地盤。
山地 山、切土等の造成地。 軟岩、地すべりに注意。
急斜面、造成地。 二次堆積土(崩れた土)で構成される。崖くずれ、地すべり。 ×
場合によっては不適

(出典:設計ガイドライン)

資料調査としては、以下があります。

  • 国土地理院発行の地形図や土地条件図などの地図資料、既往地盤調査資料及び各種文献などを用いて基礎設計に必要な地盤の情報を収集する。

  • 地名や植生などは、地域に固有な地盤条件を知る資料として有用である。

  • 小規模構造物の地震被害には、地盤条件に起因するものが多く、その危険性について調査します。

③現地調査

調査地を中心として周辺の観察を行い、資料調査の結果と照合しながら敷地の地盤状況を把握します。地形や造成盛土などの状況から、地盤の安全性や不同沈下の危険性について評価します。

太陽光発電システムの設置にあたっての重要な調査項目として例として以下があります。

  • 方角

  • 傾斜度・向き

  • 平坦度

  • 陥没の有無

  • 前面道路(幅員)

  • 障害物の有無

  • 隣地の利用状況

  • 海岸からの距離

  • 系統連系ポイント

地形・地盤では、以下の注意を行います。

  • 事前調査及び現地調査の結果から、太陽電池架台を設置する予定の用地が、軟弱地盤。埋め立て地、盛土地盤、造成地(山地、丘陵地)、崖・急斜面、谷底低地、地盤の液状化、傾斜地、森林伐採地に該当するような地盤と考えられる場合には、基礎・架台の設計時に特に注意が必要である。

④地盤調査

太陽電池架台の基礎の設計にあたっては、事前調査結果を踏まえて地盤調査を実施し、設計に必要な工学的性質に関する情報を収集します。

  • 太陽電池架台は軽量といえども地盤の状況によっては不同沈下が生ずる。

  • 杭基礎を採用する場合には、十分な支持力(圧縮力・引抜力・水平力)が必要となる。

  • 充実した事前調査を実施し、その結果を踏まえて地盤調査や土質試験を実施する必要がある。

地盤調査方法には、標準貫入試験、スウェーデン式サウンディング(SWS)試験、簡易動的貫入試験などがあり、地盤の許容支持力を原位置にて測定する方法として平板載荷試験があります。

原位置試験は、基礎設計に必要な設計用地盤定数を求めることを目的として実施し、設計用地盤定数には、地盤の支持力だけではなく、地下水位や土質区分も含まれます。

  • 原位置試験は、SWS試験を中心に行うものとする。ただし、事前調査やSWS試験で充分な情報が得られていないと判断した場合や圧密沈下が生ずる地盤では適切な原位置試験を選定し実施する。

  • 調査ポイントの箇所数と測定位置は敷地の規模と形状、地盤の状態により異なるため注意が必要である。

⑤造成・排水の計画

太陽光発電施設は、直接基礎あるいは杭基礎により支持されますが、比較的規模が小さいため表層付近の地盤状況に影響を受けます。表層付近の地盤が地滑り的変動(以降、「滑動崩落」という。)を生じた場合、太陽光発電施設のみならず土砂の流出等も発生し、二次災害につながる懸念があります。

斜面を伴う造成を行う場合に災害等を防止するために、切土、盛土、法面の勾配・形状・保護工等の設定方法,排水処理方法、滑落崩落防止対策、維持管理などについて検討しましょう。

検討には、各種調査結果に加え造成設計技術等、多岐に亘る工学的知見を必要とすることから、必要に応じ専門家の協力を得ることが望ましいとされています。

⑥配置計画

事前情報からの太陽電池モジュールレイアウト検討として、以下があります。

  • 年間最大発電量を得るための最適設置レイアウト(方位、傾斜角)

  • 離隔距離の検討(太陽光度と日陰距離)

  • モジュールレイアウト(風圧荷重や積雪荷重の考慮、面積制約と離隔距離、基礎などの諸条件を検討し、数種類のレイアウトの図面化によりコストを含めた検討)

⑦架台の設計

架台の設計

設計荷重は、JIS C 8955:2017 「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算定方法」に準じて算定します。ただし、公共工事標準仕様書などで指定があった場合にはそれに従います。

太陽電池架台及び基礎の設計で想定する荷重は、上部構造に作用し基礎に伝達される固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風圧荷重・地震荷重のほか、基礎に直接作用する固定荷重、土圧・水圧、地震荷重、その他の荷重があります。

架台の設計は、安定構造を基本とし、柱脚部の支持状況について十分に考慮することが必要です。

架台部材の設計は、許容応力度設計とします。

架台の柱脚を杭基礎で支持するときは、柱脚部に作用する水平力により杭頭部に変位が生じ、この変位により上部の架台やアレイが損傷することのないよう留意が必要です。

⑧基礎の設計

基礎は、上部構造が地盤に対して構造上支障のある沈下・浮き上がり・転倒・横移動を生じないよう安全に支持できる構造形式としましょう。

  • 基礎の形式は、太陽電池アレイ架台の規模・重量及び地盤特性を考慮して、地盤も含め適切な形式の基礎とする。

  • 基礎の構造は、鉄筋コンクリート造による直接基礎または杭基礎(支持杭及び摩擦杭)とする。

  • 基礎の設計は、架台同様に、許容応力度設計とする。

  • 設計荷重は、JIS C 8955:2017 「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算定方法」に準じて算定する。ただし、公共工事標準仕様書などで指定があった場合にはそれに従う。

地盤調査の結果から、杭の打設が可能で充分な支持力(押込み力・引抜き力・水平力)が期待できる場合には摩擦杭あるいは支持杭とすることができます。

  • 杭基礎を採用する場合は、現地にて試験杭を打設し載荷試験を実施して安全を確認すること。ただし、採用する杭が大臣認定、技術認証等を取得した工法である場合はこの限りではない。

軟弱地盤で杭の支持力が期待できない場合や反対に地盤が固い場合、あるいは地中に転石などが多くあり、杭の打設が困難な場合には直接基礎とします。

  • 直接基礎を採用するときは、SWS試験結果に基づく直接基礎の選定を目安に、基礎形式を決定する。この時、標準貫入試験以外の試験結果はN値に換算して基礎選定の判断を行う。

⑨設置工事・配線工事

設置工事・配線工事

工事は、太陽電池モジュールの設置工事、電気機器の配線工事の順で行われます。

設置に際しては、電力会社や所轄官庁へ事前に届け出や申請を進めましょう。

工事期間は、規模や仕様によって異なります。特別な基礎工事が必要になる場合は、工期が延びることもあります。

設置工事は、太陽電池モジュールの設置方法によって異なりますが、おおよそ次の手順で行われます。

  • 墨出し

  • 基礎工事

  • 架台の取付け

  • 太陽電池モジュールの取付け、太陽電池モジュール間結線

  • アレイ出力確認、アース工事

  • アレイ出力線引出し

配線工事は、機器の設置ならびに配線工事を行います。

  • 機器の設置:接続箱、パワーコンディショナ、遮断器、電力量計の取り付け

  • 配線工事:太陽電池アレイ、接続箱、パワーコンディショナ、分電盤の配線

  • その他:接地、蓄電池、避雷設備の施工

⑩竣工検査・引渡し

設置工事が完成すると、施工検査ならびに電力会社による検査が行われ、竣工検査成績表とともに引き渡されます。

  • 竣工検査の内容:太陽電池アレイや接続箱、パワーコンディショナなどについて、汚れや破損などがないかの「目視点検」、絶縁抵抗などの「測定試験」、運転・停止、停電・復電、自立運転などの「連系確認」

引渡しに際し、次のような書類が発行されますので、確認し保管して下さい。

  • 設置業者から:竣工検査成績書

  • メーカーから:製品の検査成績書、取扱説明書、保証書等

⑪運転・維持管理

電力会社の立会いのもと、太陽光発電システムの連系運転を開始します。

維持管理として、日常点検、定期点検を実施します。システムの規模によっては、点検の周期が定められている場合があります。

保守点検については、「太陽光発電システム保守点検ガイドライン 〔日本電機工業会・太陽光発電協会 技術資料〕(第2版)」をご参考に実施して下さい。

⑫廃棄(事業終了)